稲垣武(1934~)著。平成6年(1994)刊。
戦後の論壇を支配してきたマスコミや進歩的文化人たちの発言の数々を徹底的に検証し、何故そのような思考の歪みが生じたのか、原因はどこにあるのかを追究した労作。
巻末に「進歩的文化人の発言」索引付。第3回山本七平賞受賞。
彼等の思考様式が、日本人のものの考えかたの陥りやすい欠点を具現している以上、いまは影を潜めていても、またぞろ姿を変えて登場し、日本の発展を阻害しないという保証はない。(はしがき)
進歩的文化人らの頭の構造を解剖すると、革命・ユートピア幻想に裏打ちされた、完全な二重思考がある。資本主義経済・自由社会を論評するときは、懐疑の刃を振りまわして、杞憂としか思えないことも絶望的に描く。
日米安保によって日本が戦争に巻き込まれるとか、資本の自由化によって日本はアメリカ資本の支配下に置かれるといった妄説を専ら鼓吹してきた。
一方、共産主義の世界を論評するときは、それらの国の独裁者も顔負けするほどの薔薇色一色に染めあげた。西側世界を描くときは黒か灰色のクレヨン、東側を描くときは薔薇色のクレヨンのみ使うという仕掛けである。とんとマンガチックな絵といってよかろう。(あとがき)