西尾幹二(1935~)の人生論。平成8年(1996)新潮社より刊行。平成18年(2006)ワック株式会社より改訂版が刊行された。
「本書はいかなる成功の秘策も考えていない、だけではない。成功は果して人生の〈価値〉なのかを問うている」と「あとがき」にあるように、いわゆる「成功哲学」などというような視点とは正反対の発想で執筆されている。
本書には、著者の深い思索から来る賢察が随所にちりばめられている。
人は自分に関するすべての真実を知って生きているわけではない。大概のことは知らない。知らないことで救われている。(無知の権利)
自由はどこまでいっても相対的で、したがって絶対的な自由が欲しいなら、彼岸にそれを求めなくてはならない。(福音について)
後悔とは自分で自分を前にしてする懺悔のことだが、悪を犯した自分の過去はなかったほうがよいという後悔は、過去からの逃避であり、弱さの表現である。たとえどんな悪い過去でも、自分の過去は自分のいとおしい一部なのである。(懺悔について)
成功と失敗はしょせん同じものの二面にすぎない。幸福と不幸も、希望と絶望も、生と死も、結局は同じものの二面にすぎない。(あとがき)