竹内靖雄(1935~)著。平成元年(1989)刊。
本書は「経済学の発想による倫理学入門」であると本文に記されているが、決して難解な学術書などではない。「人々が欲しがっているものが全員に行き渡るほどない場合、どのようにしてそれを人々に分配すればよいか」というような問題について分析している。
利他主義、嫉妬、平等主義、競争、自由、民主主義などをテーマに、数多くの例題をもとに明快な論理を展開している。
問題A 特別に利他主義的な行為があれば、それは「奇特なこと」として称賛すればよい。しかし、そのような行為をしないという理由で、人をエゴイスト呼ばわりして非難するのはおかしいのではないか。
その通りである。「あいつは利己主義だ、自分のことしか考えていない」という非難は、借金や援助を申し出て断られた人がよく口にすることであるが、間違いなく利己主義的なのはそう言っている本人の方なのである。一般に、ある人が他人に迷惑をかけるようなことをしていない限り、その人を非難する理由はないと言わなければならない。(第一章 利他主義的の限界)