中西輝政(1947~)著。平成9年(1997)刊。
本書は、大英帝国の興隆から衰亡までの過程をつぶさに検証した歴史評論である。経済力、対外政策、戦争という面から、総合的に帝国の衰亡史を描いている。
第7回山本七平賞・第51回毎日出版文化賞受賞。
いかなる大国の盛衰も、より深く考察を進めるにつれ、しばしば精神的要素が多くの物質的要因にも増して重要な役割を果したことが明らかになってくるように思われる。
とりわけ国際社会における大国の盛衰に関して、従来重要視されてきた、国力や体制のあり方といった構造要因以外に、その国の指導者や国民の発想や思考様式といった精神的条件こそ、長期にわたる興隆と衰退の歴史の決定要因として今日、いっそう深く検討されるべき時代が到来しているように思う。
かつての古典的衰亡論における精神史的アプローチとはちがった意味ではあるが、イデオロギーと工業革命の二十世紀が終った今日、再びこうした「文明のエートス」が、重要な歴史要因として、復権すべきときが来ているように思われるからである。
少なくとも、力や体制による支配が大幅に抑制された、大英帝国という特異な支配・覇権のあり方を考えると、こうした精神的諸条件の重視はともかくも避けられないアプローチであるのである。(第一章 「パクス・ブリタニカ」の智恵)