旧姓「鳳晶子」で出版された。収録作品399首のうち100余首は書き下ろし作品である。
官能をともなう恋愛作品を高らかに詠っており、近代短歌の一大源流をなした。
夜の
歌にきけな誰れ野の花に紅き
血ぞもゆるかさむひと夜の夢のやど春を行く人神おとしめな
椿それも梅もさなりき白かりきわが罪問はぬ
その子
堂の鐘のひくきゆふべを前髪の桃のつぼみに
紫にもみうらにほふみだれ
紫の濃き虹説きしさかづきに
まゐる酒に
海棠にえうなくときし
水にねし嵯峨の
春の国恋の御国のあさぼらけしるきは髪か
今はゆかむさらばと云ひし夜の神の
細きわがうなじにあまる
秋の神の
やは肌のあつき血汐にふれも見でさびしからずや道を説く君
狂ひの子われに
乳ぶさおさへ
なにとなく君に待たるるここちして出でし花野の夕月夜かな
むねの清水あふれてつひに濁りけり君も罪の子我も罪の子
くろ髪の千すぢの髪のみだれ髪かつおもひみだれおもひみだるる
いとせめてもゆるがままにもえしめよ斯くぞ覚ゆる暮れて行く春
春みじかし何に不滅の命ぞとちからある乳を手にさぐらせぬ
道を云はず後を思はず名を問はずここに恋ひ恋ふ君と我と見る