芥川龍之介(1892~1927)のアフォリズム(箴言集)。大正12~14年(1923~25)『文藝春秋』に連載。
本書から芥川の厭世的傾向を読み取ることができる。
古典の作者の幸福なる所以は兎に角彼等の死んでいることである。
人生は一箱のマッチに似ている。重大に扱うのは莫迦莫迦しい。重大に扱わなければ危険である。
人生は落丁の多い書物に似ている。一部を成すとは称し難い。しかし
女は常に好人物を夫に持ちたがるものではない。しかし男は好人物を常に友だちに持ちたがるものである。
古来賭博に熱中した厭世主義者のないことは如何に賭博の人生に酷似しているかを示すものである。
結婚は性慾を調節することには有効である。が、恋愛を調節することには有効ではない。
万人に共通した唯一の感情は死に対する恐怖である。道徳的に自殺の不評判であるのは必ずしも偶然ではないかも知れない。
彼は最左翼の更に左翼に位していた。従って最左翼をも軽蔑していた。
何びとも偶像を破壊することに異存を持っているものはない。同時に又彼自身を偶像にすることに異存を持っているものもない。
わたしは良心を持っていない。わたしの持っているのは神経ばかりである。